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SQL Server Express版から製品版への移行、業務システムのパフォーマンス問題解決の事例

2025年04月08日 スタッフブログ 平川 開発 

SQL Server Express版は、無料で利用できる軽量なデータベースとして多くの企業で採用されていますが、規模や負荷が増すにつれてその制限が課題となることがあります。ここでは、ある業務システムを例に、Express版から製品版への切り替えを検討する判断基準、移行プロセス、そしてその効果について紹介します。
 

業務システムの状況

弊社が構築する業務システムでは、SQL Server Express版をデータベースとして利用することが多いのですが、あるお客様のシステムでは運用開始から3年が経過し、データ量の増加に伴い課題が浮上しました。特に、特定の機能の処理速度が遅いとの報告が寄せられるようになりました。
 
問題解決のため、インデックスの見直しや再構築といった一般的な改善策を実施しましたが、効果は限定的でした。調査を進めたところ、以下の状況が判明しました。
 
①多数のユーザーが同時に使用する午前中は遅延が顕著だが、同時接続数が少ない時間帯では問題がほぼ発生しない。
②データが格納されているサーバー機では、ネットワーク上のデータ往来が少ないにもかかわらず、同時接続が多い時間帯に同様の遅延が発生。
③当初はネットワークトラフィックの増加が原因と疑ったが、サーバー機でもレスポンスが遅延したため別の要因が疑われた。
 
この状況から、Express版の「同時に処理できるデータ量の制限」がパフォーマンス低下の根本原因と推定されました。
 

原因特定と試用版への切り替え

原因を特定するため、SQL Serverの製品版試用版(Evaluation Edition)を導入しました。この試用版は180日間フル機能を利用でき、Express版からのアップグレードをテストするのに最適です。試用版に切り替えた翌日、効果はすぐに現れました。午前中の高負荷時でも処理速度の遅延が解消し、システム全体のレスポンスが向上。これにより、Express版の処理能力がボトルネックだったことが確定しました。
 

製品版への移行と決断

試用版での効果を確認したお客様は、製品版(Standard版)の購入を決断しました。正式なライセンスを適用する予定です。
 

まとめ

SQL Server Express版は初期コストを抑えた運用に適していますが、業務拡大に伴う負荷増大には限界があります。今回のように試用版の活用による検証は初めてでしたが、原因の特定と製品版購入の判断に大いに役立ちました。備忘録としての記事にはなりますが、製品版導入の参考になれば幸いです。